他者の語らい

知の教科書 フロイト=ラカン (講談社選書メチエ)

知の教科書 フロイト=ラカン (講談社選書メチエ)

ラカンは、『人の欲望は他者の欲望である』というテーゼを定式化した。だが、このことはけっして人間の主体的決定の余地を奪うものではない。人間の主体的決定は、まさにこの他者からやってくる欲望をいかに自分のものにするかということのうちに存する。フロイトの発見した『無意識』とは、そうした主体的決定の過程において、形成されるものにほかならない。・・・他者からやってきた欲望を抑圧することで、人はその上に自分の欲望を築いてゆくのであり、抑圧された他者の欲望は『無意識』を構成し、無意識において存続する。(43-4)