1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

いままで、この人の小説はなぜか敬遠してきたんだが、この本はおもしろくて一気に最後まで読んでしまった。主人公の片説家、配川ゆかり、バックベアードなんかは村上春樹の小説のにおいがするし、こじつけ探偵は京極堂に登場する榎津に似ている。ほんでもって、テーマとしては高橋源一郎の『日本文学盛衰史大塚英志の『更新期の文学』で扱われていた「文体」の問題など、けっこう僕の好きなものたちをまぜまぜした感じの小説。惜しむらくは、小説内の物語だけでは、新しい文体についてがどのようなものか語られておらず、現代小説の問題点として「文体」を焦点化したところにとどまっているところ。とはいえ、優れた読み手からすれば、この小説形式それ自体が何か新しいものを生み出しているとも言えたりとか??

いつだかの朝日新聞でこの本とともに、筒井康隆の『巨船ベラス・レトラス』が紹介されていたので、今度はそっちを読む。と思う。