自分探しが止まらない

自分探しが止まらない (SB新書)

自分探しが止まらない (SB新書)

以下、要点のまとめ

  • 「自分探し」の旅とは現実逃避の旅(外こもり
  • 「自分」=「個性」を他者との関係においてではなく、自己のうちにあると思ってるよ(内こもり)
  • とはいっても、自分探しはいまに始まったことじゃない
    • たとえば、小田実とかもそうだし、団塊の世代における1960年代とか最近(セカンド・ライフ)もね。
    • でも、現代に特有なのは、「自分探し」のあり方が、80年代のように消費に向かうのではなく、非消費的なもの=内面に向かうとこ。
  • 最終的なこたえは、過去の宗教とか共同体の時代には戻れないんだから、「現実逃避ではなく、前向きな姿勢」でいきまっしょい。

 「自分探しホイホイ」って言葉すごいな(笑)すごい響きだな。そして、帯の絵がひどい!!
 この本のなかでは、中田ヒデ・ねるとん・あいのり・猿顔石とか、まあいろんな題材は出てくるんだけど、自己啓発書・自己啓発セミナー的な手法による「自分探し」、または「自分探し」を焚きつけといて、それらを「ホイホイ」ゲットしようとする消費的な構造にたいして特に辛口。
 といっても、いろんな対象が「自分探し」として議論されていくので、この著作では「自分探しじゃないものってないんじゃない?」っていう感じがしなくもない。さらには、タイトルの「自分探しが止まらない」って否定的な意味で読まれることの方が多いと思うけど、「自分探しが止まらない」状況にたいして、まだましは「自分探し」をしなさいよってことを述べているようにも思える。最後の総括の「前向きな姿勢」ってのも、実は「良い自分探し」のことであって、けっして「自分探し」にたいして完全にメタな立ち位置から議論がされているんじゃないような、そんな感じがした。

ハチミツとクローバー 6 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 6 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 7 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 7 (クイーンズコミックス)

 さて、「自分探し」とか聞くと「イタタ(恥ずかしい)」って感じちゃう方なんだけど、この言葉を聞くと思い出してしまうのが、やっぱり「ハチクロ」の竹本くん。周囲の人たちのなんともアンビバレンツな態度(イタタ+青春だな)、そして本人のキャラといったら、もうたまりません。あの話が出てくるのは、たしか、6・7巻あたりだったかな。

第1章 自己啓発セミナーの危険性
 こちらは、自己啓発セミナーを宗教や心理療法と比較しながら、精神分析的考察を加えているもの。自己啓発セミナーって、最後に無茶な勧誘をさせるっていうところが批判の対象となることが多いんだけど、そこではなくて、自己啓発セミナーで目指される自己像っていうのが、危険なものだよっていうはなし。要点は、

  • 自己啓発セミナーは、宗教とか心理療法(以下、専門)と似てるとこもあるけど、決定的に違う点がいくつかあるよ。
    • 転移のかたちとしては、専門では垂直(教祖や分析者)なんだけど、セミナーでは水平(匿名の共同参加者)だよ
    • 専門では、自己の棄却(=ナルシシズムの否定)が目指されるけど、自己啓発セミナーでは、自己充足(=ナルシシズム)が目指されるよ
    • その結果、欲望の遅延(迂回)を目指す専門にたいして、セミナーは他者を自分の要求どおりにしようとし、この事態の処理に対応できないよ。